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新刊コミック案内

鉄板の人気コミック、知る人ぞ知るディープなコミックの新刊を、3分で読めるシンプルな文章で紹介します

島本和彦『アオイホノオ 16』

 

『アオイホノオ』は、島本和彦の自伝的青春漫画である。ストーリーには、かなりの誇張や演出があるものの、庵野秀明や岡田斗司夫、矢野健太郎といった実在の有名人が登場し、成功してからの島本の生活を描いた『吠えろペン』よりは、実話に近く、多くの伝説的なエピソードも取り上げられている。

晴れて、『必殺の転校生』で増刊少年サンデーからデビューすることとなった炎燃(ホノオ モユル)は、いよいよプロの漫画家の道を歩み出す。だが、トントン拍子で話が進みすぎるために、ホノオは自分を潰す陰謀ではないかといぶかったりする。それまで強気で攻めてきたホノオだが、次第に自分が漫画家としてまだ準備不足であることに気づくのである。しかし、そんなことにはおかまいなく、次々に編集者は話を進めてゆく。

曰く、原作付きで連載をしないか、曰く、ガンダムを描かないか、そしてついに名前の出た大物の名前は、雁屋哲。当時すでに『男組』や『男大空』をヒットさせていた巨匠だ。

次々に押し付けられる無理難題を前に、ホノオはどう出るのか。

よもや、尻尾を巻いて逃げ出すなどということは…


実話ベースだから、Wikipediaで島本和彦の項を調べると、先の展開はだいたい読めてしまうのだが、それは隠し味のお約束ということで。

新海誠・琴音らんまる『君の名は。』 01

新海誠原作、琴音らんまる漫画『君の名は。』01は、大ヒット上演中(2016・8~)の新海誠監督のアニメーション映画『君の名は。』のコミカライズだ。

生まれ変わったら男の子になりたい、それが口癖だった田舎の女子高生宮水三葉は、不思議な夢を見る。はっきりとは覚えてないが、翌日家族や友人など周囲の人は、口をそろえて三葉の行動が変だったという。男っぽい行動や髪型の上、男子トイレに入ろうとする、狐憑きかと言われる。そしてノートの上に残された「お前は誰だ?」の文字。

三葉は、田舎での生活に飽き飽きとしていた。狭くて秘密のきかない町が嫌だった。家は神主の家系で、自分も巫女の役割を果たし、そこで口噛み酒の神事を行わなければならず、それを学校の友達に見られるのが嫌だった。

そうして朝目が覚めると東京の男子高校生に生まれ変わる夢を見た。そこでは、放課後友達とカフェに行き、さらにイタリアンの店でアルバイトしている。美人の先輩スタッッフのスカートを直したりして、気に入られてしまう。

三葉と意識が入れ替わったのは、立花瀧という高校生らしい。夢かと思ったがその間に、自分の意識を別の人間が入り込んでいたようだ。

そして二人は、異性としての生活を楽しんでしまう。するとそれまでの生活に変化が生じ始める。三葉は、スポーツウーマンとなり、女子からも男子からも告白されるようになり、瀧もそれまで話しかけられなかった女性といつの間にかデートにまでこぎつけたことになっていた。男の身体を女が操縦し、女の身体を男が操縦した方がモテにつながるというのが、前半のツボである。

事態を理解した二人はやがて三葉のノート、瀧の相互に約束をするようになる。自分の裸を見るな、胸をさわるな、あぐらを組むな、ブラジャーをしろ、スイーツにお金をつかいすぎるな、といった男女のデリケートな部分での暴走を避けるためである。だが、その約束が完全に守られることはない…

生活を共有することで、いつしか二人は、意識し合うようになる。どこか遠い場所のその人は、本当に存在するのだろうか。

思春期の少年少女の意識の入れ替わりという点では、大林宜彦の映画『ふたり』の焼き直しのように見えるが、意識が頻繁に交換され、元の身体に戻れない不安がない点と、相手が遠く離れて面識がない点が異なる。距離による恋愛の特権化は新海誠の十八番のモチーフなのだ。

『秒速5センチメートル』のように、前半運命的な出会いへの期待を思いきり煽ったのに、後半あまりに現実に近づけようとして、盛り上がりを欠いてしまうこともないだろう。漫画家の琴音らんまるは、過去に細田守の『時をかける少女』のコミカライズを手がけたこともあり、キャラクターも違和感がなく、描線も丁寧だ。コミックにしても、思いきり楽しめる傑作に仕上がっていると思う。

一気に、最後まで読み切ってしまいたいが、『君の名は』は雑誌「月刊コミックアライブ」で連載中で、2巻はまだ出ていない。近くに上映中の映画館がなく2巻やDVDが待ちきれない人は、新海誠自身による『小説 君の名は』がお勧め。

 

 

 Kindle版

目次

10) 大場つぐみ・小畑健『プラチナエンド 2』
9)板垣恵介『刃牙道 11』

8)和夏弘雨・碧海景『火葬場のない町に鐘が鳴る時 5』

7)小山宙哉『宇宙兄弟 28』

6) 北条司『エンジェル・ハート 2ndシーズン 13』

5) 大場つぐみ×小畑健『プラチナエンド 1』
4) 板垣恵介『刃牙道 9』

3) 諌山創『進撃の巨人 18』

2) 小山宙也『宇宙兄弟 27』

1) 荒川弘×田中芳樹『アルスラーン戦記 4』

大場つぐみ・小畑健『プラチナエンド 2』

『デスノート』そして『バクマン。』を生んだ大場つぐみ原作、小橋健のゴールデンコンビがおくる『プラチナエンド』も第二巻。かなり複雑なルールを持ったストーリーなので、若干の解説が必要だ。

 

 

【第一巻のあらすじ】

神が引退を宣言したため、天使たちは人類から選ばれた13人の神候補の中から、一人の新しい神を選び出すように、求められる。神候補は、担当となった天使のランクに応じて、空を飛べる翼、相手に自分を好きにならせコントロールできる赤の矢、相手を殺すことのできる白の矢のいずれか、あるいはそのすべてを手に入れることができる。主人公の架橋明日(かけはし みらい)についた天使ナッセは特級であったがゆえに三つすべてを明日は手に入れることができた。

一巻では一人の神候補が、正義の味方メトロポリマンを名乗るもう一人の神候補によって殺された。

 

これで神候補は12人になった。メトロポリマンは、自らが神になるために、他の11人の神候補も殺そうとしているのだろうか。

 

【そして第二巻へ】

第一巻のラストでは、学校に登校しようとした明日が、好きな女の子のに赤の矢に刺される。彼女は殺すための白の矢も、飛ぶための翼も持ってはいなかった。咲についた天使ルベルが望んだのは、明日の抹殺ではなく、むしろ咲の保護だったのだ。

かくして明日は咲の家に身を寄せながら、力を合わせることになるが、咲が明日に対して好意を抱いているかどうかは微妙だった。

テレビを通じて、メトロポリマンが球場に神候補に話し合いのための結集を呼びかける。

罠とは知りながらも、球場に出かける明日と咲だったが、メトロポリマンの前に、現れたのは、メトロブルーとメトロイエロー、そして一人の少女だった。彼らも神候補なのだろうか。

その後に二人が目にした光景とは?


他の神候補をことごとく殺しながら、一歩一歩神へと近づこうとするメトロポリマン。彼はさらに殺した他の神候補の翼や矢を、自分の味方に与えることさえできるのだ。

パワーアップしたメトロポリマンによって、明日と咲は追いつめられ殺されるのを待つばかり。生きのびるためには、他の神候補を味方につけるしかない。いつしか、ゲームはメトロポリマンと明日たちとの団体戦へと変わってゆくのだった。

『デスノート』に類似したゲームの規則による知能戦バトルものであるにもかかわらず、今一つ巷の評判がよくないのは、主人公架橋明日が意志薄弱で、この世の中を支配しようといった気持ちがほとんど見られないからである。『デスノート』との差別化のため、弱く善良な人間が、強い悪人に勝つ方法をあえて模索するという無理目の設定を行ったのかもしれないが、はたして長期的にその設定が説得力を持つようになるかどうか。ここはゴールデンコンビの次なる妙手を期待したいところである。

 

板垣恵介『刃牙道 11』

板垣恵介『刃牙道』とは、要するに、それまでの刃牙シリーズでいったん出来上がってしまった、格闘技界の序列(ヒエラルキー)をいったんシャッフルし、再度新たな基準でそのつ強弱をつけ直すという試みである。その中心となるのが、クローン技術によって、現代に蘇った宮本武蔵というわけだ。

 

宮本武蔵は、素手の対決においても、地下闘技場の若きチャンピオン範馬刃牙を二度にわたって退け、神心会空手の総帥愚地独歩を完膚なきまでに打ち破り、そして武器使用での戦いでも中国拳法の雄烈海王を葬り去った。そして、現代の頂点に立つ範馬勇次郎との戦いのクライマックス、武蔵の秘技「無刀」がまさに炸裂せんとするその時に、間に割って入ったのが本部流柔術の本部以蔵だった。彼は、武士の時代の武芸百般に通じ、それに対する知識のない現代の格闘家たちを自分が守るのだと豪語する。

それまで、武器を用いない戦いでは精彩がなく、負け犬キャラの烙印を押されてきた本部だが、いったん武器使用を行えば豹変、刀だけでなく、手裏剣や縄、鎖鎌、爆薬に至るまであらゆる武器使用に長けて、道場での戦いではガイアを子供扱いしてしまう。

そして、本部が次の標的としたのが、外科手術とドーピングで2メートル40センチまでサイズアップした範馬の血をひくモンスター、ジャック・ハンマーだった。

夜の公園で、何でもありの戦いが展開する。本部はジャックの驚異的な力を封じ、武蔵から彼を守りきることができるだろうか。

というわけで、範馬勇次郎と宮本武蔵を酒場で語らせたり、ガイアと道場で対戦させて、本部の隠れた強さを強調する作者板垣恵介、ジャックが終ればさらに巨大な古代人ピクルが武蔵の対戦相手として控えているが、フィジカル面では彼らに遠く及ばない本部が、どこまで意地を貫くことができるだろうか。