諌山創『進撃の巨人 18』
16,17巻とヒストリアらレイス家の人々、浅からぬ因縁のあったリヴァイとケニーと、登場人物たちの過去の謎を明らかにしてきた諌山創『進撃の巨人』だが、18巻ではいよいよエレン・イェーガーの生い立ちが語られる。自分の息子を実験台にすることを厭わない非情の父親や母親の息子に向けた言葉には『新世紀エヴァンゲリオン』の影響が感じられる。
リヴァイに率いられたエレンたち調査兵団は、訓練兵団の教官シャーディスのもとを訪ねる。彼は、エルヴィンの一つ前の調査兵団団長であり、エレンの生い立ちを、そしてエレンの父グリシアや母カルラの秘密を知る唯一の男だったからだ。
シャーディスがグリシアと会ったのは今から20年前、壁の外、ウォール・マリアのシガンシナ壁門の前でのことだった。彼は名前と、医者であること以外自分のことも、世界のことも何も知らなかった。シャーディスが連れて行った酒場でグリシアとカルラは出会い、やがて結婚、エレンが生まれる。5年前エルヴィンに地位を譲ったシャーディスは、グリシアの元を訪ねるが、すでにウォール・マリアは破られ、あの悲劇が訪れる。そしてグリシアはエレンとともに森へと向かったのだった…
ウォールに空いた穴を塞ぐための切り札、エレンの硬質化能力を手に入れた調査兵団は、いよいよウォールマリア奪還計画に取りかかる。巨人たちからの自由を求めて、そして今なお残る謎を解く鍵の秘められた地下室を求めて。人類の命運を賭けた一戦が、エレンたちの故郷を舞台に今まさに始まろうとしていた。
小山宙也『宇宙兄弟 27』
ついに月に足を踏み出した南波六太。その一方で伊東せりかはISS(国際宇宙ステーション)でALSの特効薬をつくるための実験に日々励んでいた。父親をALSで失ったせりかにとって、それは長年の悲願だったが、地上ではネット上の悪意ある情報によって、彼女に黒い噂が飛び交い、しだいにJAXA、さらには文部科学省まで巻き込んだスキャンダルへと発展しようとしていた。
やがて彼女の実験にも中止の声があがる。
その時、せりかは、そして友人の窮地を知った六太はどう行動するのか?
せりかの実験の成果は出ない。地上をはるかに離れた宇宙空間で、追いつめられ、ストレスがピークに達したせりかの感情は千々に乱れる。
そして、最後に彼女が無重力空間で流した涙の正体とは?
全巻にヒロインの姿をクローズアップしながら、『宇宙兄弟』始まって以来最もダークな人の心の部分を描くのが、この27巻である。
荒川弘×田中芳樹『アルスラーン戦記 4』
文中敬称略
田中芳樹原作、荒川弘漫画の『アルスラーン戦記』も第四巻。
王都ルシタニアを占拠されたパルスの王子アルスラーンの一行は、兵力の増強をはかるべくカシャーン城塞の主、ホディールのもとを訪ねる。
しかし、ホディールは、アルスラーンの両腕であるナルサス、ダリューンを引き離そうとする。謀に気づき、カシャーン城塞を離れたアルスラーンの一行は、追手のルシタニア兵に遭遇し、ダリューン、ナルサスとも離れ離れになってしまう。
頼りになるのは、ナルサスに仕える少年エラムと、野心家の吟遊詩人ギーヴだけだった。次々に迫りくるルシタニアの軍勢をはねのけて、次なる目的地ペシャワールへたどりつくことができるのだろうか?
幼いころ王宮から離れ街中で育ったアルスラーンは、身分の違いの意味が理解できない。それゆえ臣下のナルサスの従者エラムにさえ友情を求め、奴隷解放をめざそうとする。だが、今回はその考え方が仇となる。
先王オストロエスの子、ヒルメスが銀仮面卿としてルシタニアの権力中枢に潜り込み、豊富な情報網で追手をさしむける中、はたして王子らしからぬ王子アルスラーンが、パルスの王位につく日は来るのだろうか?