小山宙也『宇宙兄弟 27』
ついに月に足を踏み出した南波六太。その一方で伊東せりかはISS(国際宇宙ステーション)でALSの特効薬をつくるための実験に日々励んでいた。父親をALSで失ったせりかにとって、それは長年の悲願だったが、地上ではネット上の悪意ある情報によって、彼女に黒い噂が飛び交い、しだいにJAXA、さらには文部科学省まで巻き込んだスキャンダルへと発展しようとしていた。
やがて彼女の実験にも中止の声があがる。
その時、せりかは、そして友人の窮地を知った六太はどう行動するのか?
せりかの実験の成果は出ない。地上をはるかに離れた宇宙空間で、追いつめられ、ストレスがピークに達したせりかの感情は千々に乱れる。
そして、最後に彼女が無重力空間で流した涙の正体とは?
全巻にヒロインの姿をクローズアップしながら、『宇宙兄弟』始まって以来最もダークな人の心の部分を描くのが、この27巻である。